2012/04/08

『この大空に、翼をひろげて』 体験版 感想

『この大空に、翼をひろげて』の体験版をプレイしました。公式はこちら(http://konosora.jp/

傑作になる予感しかしない…!

いや文句のつけようがない出来です。体験版なのに面白くて2周プレイしちゃいました。俺こういう話大好き。体験版は1.5GBもあるのでかなりのボリュームなんですが、これ全体のうちのどのくらいの割合なんですかね?プロローグのみなのか、共通全部なのか。

ストーリーの最初の部分だけまとめておきます。

元はロードレースで全国三位になるような選手だった主人公がレース中の事故で足を怪我して自転車競技を諦め、故郷に帰ってくるところから始まります。そして、再開発で風車やソーラーパネルが立ち並ぶようになった丘で車椅子の少女と出会う。メインヒロインのひとり、小鳥です。彼女は2年前の事故で歩けなくなった、という設定です。主人公も小鳥もかつてはできていたことを唐突に「奪われた」という点で共通している。

物語の中心となるのは部活動です。ソアリング部というグライダーを作って飛ぶ部活です。この部は当初はメインヒロインの一人である天音せんぱいが一人でやっていて廃部寸前でしたが、そこに主人公と小鳥、さらに幼なじみヒロインのあげはが入部して廃部を逃れ…と展開していきます。

かなり長い体験版ですが、この入部するあたりまでとりあえずプレイしてみるといいかもしれません。俺がハマったのはこのあたりで、具体的にはソアリング部に入る直前、天音せんぱいが紙飛行機を使ってグライダーの仕組みについて説明したところからです。この説明が、やたらと上手い。わかりやすいし、天音せんぱいがグライダーのことホント好きなんだなーと伝わってくる。そしてこの紙飛行機を使ったすごく上手い説明の後に、「(グライダーは)紙飛行機を大きく頑丈にして、コックピットを取り付けただけのものなんだ」という天音せんぱいの台詞が入る。これはワクワクせざるを得ない。主人公や小鳥と同じ気持ちになって一気に物語にノッてしまいました。グライダー、すてき!

あと、この主人公と小鳥のキャラ設定にグライダーをぶつけてきたのは上手いと思います。グライダーってのは、自分で動力源をもたず、風に乗って飛ぶものなので、自由度が基本的に低く、コントロールがあまり思い通りにいかない。特に、上昇は上昇気流に乗らないとどうしようもない。こういったコントロールのもどかしさと、かつて持っていたものを「奪われた」せいで、かつてできていたことが上手くできないときに感じるもどかしさがすごく似ている。

このもどかしさによる「ため」のおかげで、例えばグライダーのフライトシーンで、上手く上昇気流を掴んで高度が一気に上がるときの爽快感や突破感の気持ちよさがかなり強まっている。そういえばここでのOP挿入歌もかなり良かったですね。この構造が物語自体と同期されたときには間違いなくすばらしい作品になると思います。

体験版は、ソアリング部の目標である「雲の廻廊」(ごく稀に短時間だけ出現する直線上の雲)にあと一歩で到達できず、天音せんぱいがソアリング部を去ってソアリング部が廃部になる、というところで終わります。廃部のくだりは若干唐突ですが、「奪われる」というのは唐突であることが必要条件なので、この唐突さは意図したものだと思います。

ただ、奪われても残るものがある。それは天音せんぱいの残したグライダーの設計図や、天音せんぱいから受け継いだグライダーを好きな気持ちや、雲の廻廊という目標。ゼロになったわけではない。

主人公の操縦、あげはの工作技術、小鳥の情熱、そして天音せんぱいの設計の全てが収束して、あの雲を突破するシーンがどうしても見たい。天音せんぱいも一緒に、です。

楽しみすぎて5月まで待てない…これも「もどかしさ」か…

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ちなみに、しいて欠点をあげるならあげはの妹のほたるが出てくるたびに物語なんてどうでもいいからほたるを攻略させろ!と思ってしまうことです。あれはちょっと圧倒的にかわいい。プレイした人はわかるかと思いますが、ほたるが主人公とあげはからの勧誘を「……私、いい」って言って断るシーンに至ってはもう…かわいすぎる…

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(追記)本編小鳥ルートの感想はこちらです。
http://sagaslave.blogspot.jp/2012/06/blog-post.html