2013/01/10

『はるまで、くるる。』 感想

はるくるプレイしたのでその感想。ネタバレしないようにしようと思って書き始めたのに結局なんか中途半端にネタバレ入れないと書けなかったとのことです。

DL版がいつの間にか販売していたそうで、知ってすぐ購入(@DMM)して一気にプレイいたしました。いやー非常に好いゲームです。(シナリオが)凄いとか綺麗とか面白いとか女の子がぎゃわいいとかエロいとかオナニーがいっぱいあるよぉとかそういう「これだっ!」ていうのはないんですけど、ものすごく好感が持てる。

好感を持った理由はいくつかあるんですが、まず一つ目は、丁寧なシナリオですね。萌えゲーアワードのシナリオ賞で銀賞とってるらしいですが、なるほどといった感じ。といっても驚きがあるようなものではないと思います。記憶を消してもう一度やりたいとかいうタイプのゲームではないというとわかりやすいでしょうか。

バールを持ったヒロインに代表される違和感のあるキャラクター達が、高すぎる煙突に代表される違和感のある箱庭じみた世界でエロいことしまくっているという違和感ありまくりな展開で始まって、謎につられて読み進めていくうちに段々と状況が明かされていく。また、適当なタイミングで新たに異常な状況をつっこんで謎を供給してくれますし、魚の釣り針とかの伏線もわかりやすく入れてくれるため、ダレることなく読めます。

そして中盤から後半にかけて謎が一気に明かされるところでは、解説によって新たに生じるであろう疑問にも答えようとしてくれます。それ自体の不自然さが気になるかどうかは個人的にはさほど問題ではないです。丁寧に答えようとする態度自体が好ましい。

描写の量も適当だと思います。絶望に至るには時間が必要ですが、必要なら必要なだけ描いてある。世界の謎が明かされたとき、主人公と同じく、こりゃどうしようもねえなーと思いましたもん。段階をちゃんと追っているので展開に抜けがない。

二つ目は、すっとぼけたテキストですね。なんかバールもってるヒロインがいたり魚さばくの初めて見て「Noッ!」とか叫びまくって唐突にゲロ吐くヒロインがいたりバールをステッキにしたゲロ吐き魔法少女ヒロインがいたりいろいろおかしなことになってるんですが、ボケに全く気負いがない。かるーくごく当たり前のことのように流して書いてある。なんでも力入ってる感じのはあんまり好きではないのでこのへんも心地良かったですね。そんでいて締めるところではちゃんと締まっている。一部シリアスなシーンで古式ゆかしいリピート埋め尽くしみたいなのがでてきますがその辺もご愛嬌といった感じで流せるくらい好感がもてました。

あとはやっぱりキャラクターたちですね。主人公をナイフでぷすぷすしちゃう晴海さんはおっぱいでかすぎるので好きではないですが、他の三人は好きですねえ。なお、この「好き」は、ああセックスしたいなぁというようなものでもああ匂い嗅ぎたいなぁとかいうのでもないです。愛着ですね。静夏さんの、あそこで「ややこしい話はくだらないから朝エッチしましょう!」と言ってしまうカッコよさ。秋桜さんの「世界は今日も平和です」などと心にもないことを言いたくなるようなかわいさ。冬音さんはまあ…ずるいんだけど……。

主人公も含め、彼らはみんなどっかおかしい。虚構的なキャラクターという印象は受けます。だけど、それが否定的な印象を生むことは全くない。そんな彼らが集合している理由については物語上で説明されてたりしますが、それは関係ないです。彼らの異常さも、そういうものとして好ましいと思える。そう思えるだけの時間が描かれています。

綺麗に言えば。リセットされ、春に至れない絶望を繰り返す彼らを眺めるうちに、俺は彼らへの愛着を堆積していった。彼らが、記憶を失っても感情の残滓を堆積していったのと同じように。だからですかね、ラストシーンで春すぎる春を迎えることができた彼らに、ただただ「おめでとう」と伝えたくなったのは。

新年一発目からめでたい気持ちになれるゲームに出会えました。次作の『なつくもゆるる』が楽しみです。